QSVPC代表・宮澤摩周Interview
Quer Swingar Vem Pra Cáの2025年のサンバ「”A PAZ” Eu quero o mundo melhor!」はどんなコンセプトで作られた曲ですか?
コロナパンデミックが終わってチームがリオ遠征を再開したので、「再生」をテーマに2024年のチームのサンバを作曲家のHenrique Guerraさんに書いてもらいました。
しかしその間にも、ロシアとウクライナの戦争は続いていて、イスラエルは周辺の国々を巻き込んで争いを始めました。
民間の旅客機が落ちたり、インターネット上は胸が悪くなるような報道・動画で溢れています。みんなどこかイライラしていて寛容でなくなってしまいました。
ブラジル・リオ、僕の音楽の故郷でもあるVila Isabelの丘・Pau da Bandeiraは、毎晩のように激しい警察と麻薬組織、時には、組織同士の縄張り争いでtiroteio(銃撃戦)が発生しています。
誰も手を差し伸べてくれない、出口の見えない貧さから自力で抜け出すために麻薬売買に手を染める子どもたちのことをどう捉えるのか、ただ目の前の事象を善悪で判断していても何も解決しません。
そんなことを考えていたら、副代表のJonattが「じゃあ今回は「平和」をテーマに知り合いの作曲家何人かに話を振ってみようよ」と背中を押してくれたというわけです。
個人的には自分の音楽を使って政治や思想を語ることは好きではありませんが、このサンバはリオの景色の断片を歌詞にしていて、誰かがこのサンバを聞いた時、立ち止まって何かちょっと考えたり、何かに気がついたりしてくれたら、という思いを込めました。
曲の物語に登場するPerdeu manéとは、assaltante(強盗)が被害者に向けて使う決まり文句です。
それに対し、カヴァキーニョを演奏してくれているDaniloが、コーラスのレコーディングで”Perdeu mané. Aqui é a paz!!” (おい残念だったな。ここは平和だ!)と、曲の最後にアドリブでセリフを入れてくれました。
丘に住んでいる彼の口からとっさに出たこの叫びは、豊かすぎて見えているべきものが見えなくなっている僕らへの強烈なメッセージだと思えてならないのです。

Vila Isabelの丘と、平和・友好への願いを込めた今年のチームTシャツ
この曲に何を感じてもらえたら嬉しいか、読者の皆さんへのメッセージをお願いします.
聞いていただくのは音楽なので、もちろん聞いて楽しみ、歌って楽しんでいただけたら制作者としてこの上ない喜びです。
サンバを聞くとき、ひとつ知っておいていただきたいのは、サンバは彼らの生活に密接に関わっている文化であること、彼らの生活の中から出てきたものだと説明しても間違いではないものということです。ただ音楽的な化学反応で派生したジャンルではないんです。ですから歌詞にはたくさんの物語が詰まっています。今回、こういったテーマで初めてサンバを書いてもらい、その過程を見せてもらって認識を新たにしました。サンバの誘水をすれば、彼らからはいくらでも言葉が溢れてきます。「ふーん」という感じでもいいので、そんなことにも思いを寄せていただけたら嬉しいです。

平和を願って、2025年のサンバを皆で奏でる
歌詞紹介
Eu quero o mundo melhor
Nos quatro cantos da terra
O novo tempo de paz
O fim das guerras
Quer Swingar vem pra cá
É tempo de Carnaval
Meu bloco clama a paz mundial
世界をもっと良くしたい
東西南北の隅々まで
新たな平和の時代
戦争の時代は終わり
スイングしたけりゃこっちへおいで
カーニバルの時間だ
このブロッコが世界平和を訴える
Quero ir e vir tranquilamente
Pelos bairros de qualquer cidade
Andar em becos e vielas
No asfalto nas favelas
Transitar com liberdade
Sem temer balas perdidas
Sem ouvir “Perdeu mané”
心穏やかに行き来できるようになりたい
どの街のどの地域でも
路地や小道も
ファベーラのアスファルトの道も
自由に移動したい
流れ弾を恐れる必要もなく
“Perdeu mané”の声を聞くこともなく
Ainda resta um pouco de esperança
Lá vou eu, seja o que Deus quiser
Eu acredito na virada da maré
まだ少しの希望は残っている
僕は行く、なんとかなるさ
潮目が変わることを信じてる
※ “Perdeu mané”:強盗が物を盗った後に言う捨て台詞